【ライヴレポート】ナードマグネット@代々木Labo 2015.6.20
Mixtape Release Tour Final 東京編
昨年末シングル「Mixtape」をリリースしたナードマグネット。そのリリースツアーファイナル東京編が、6月20日に開催された。
LEAVE’S NO ASH、NUDGE’EM ALLの好演によって、ナードマグネットの面々がステージに上がる前から、すでに会場は熱気に満ちていた。
この夜、ナードマグネットを前にしながら、多くのパワーポップバンドが思い返された。Weezerはもちろん、Matthew Sweet、The Posies、Velvet Crush、Jellyfish、Superchunk、The Trampolinesといった90’sのパワーポップ勢から、Motion City Soundtrack、Fountains of Wayneのようなゼロ年代に特に活躍してきたバンド(あるいは彼らのアー写でも見ることが出来るThe Get Up Kidsも!?)、そして国内のスピッツやフジファブリック、メレンゲ…幾つものバンドを思い出したが、最後まで観てみるとどうだろう、違う。これはナードマグネットのライブで、それは、それらのバンドを思い返すくらい、彼らがパワーポップを引き受けているからだ、と実感した。
暗転。どこからともなくMCの声が聞こえてくる。「恋に敗れたやつはいるかー!」オーディエンスは返す。オー!「恋に恋い焦がれて躍起になったやつはいるかー!」オー!「泣く準備はできてるかーい!?合唱する用意はできてるかーい!?さぁ!ナードマグネット!」
4人がステージに上がる。飄々としていながらも、オーディエンスの熱気に負けんばかりの静かな熱を見せるギター&ボーカルの須田亮太が、ふっと「例えば、出演者のand moreが急に消えた時とか、東京への遠征の寸前で会場が変更になった時…」と語り出す。「どうなるかって思うでしょう?でも、大阪からちゃんとやって参りました!ナードマグネットです!」高らかに叫び、ギターが1度、掻き鳴らされ、タムとスネアがドンドンドンドンと響く。フ〜♪というスキャットの合唱が起こる。「ばくだんベビー」だ!
Weezerかと見紛うくらいのパワフルなアンサンブルが重なっていく。1曲目であるにもかかわらずギターの藤井亮輔は、客席まで降りるかのように間奏のギターソロを魅せつける。そこに須田の《笑っておくれよ、カム・ウィズ・ミー、頭がイカれてるんだよ、ダンス・ウィズ・ミー》というシャウトが重なる。そう、頭がイカれてるんだ、頭がイカれてるくらいに空間がパワーポップ一色に塗りつぶされる。今晩は、泣きたいんだ、嘆きたいんだ。でも、それは1人で、ではない。ナードマグネットと共に、彼らの曲と共に、だ。
それを証明するように、続いたのは「pluto」。ベースの前川知子とドラムの秀村拓哉のタイトなリズム隊のビートに乗って、藤井のエッジの立ったギターが響く。《明日届くかな冥王星へと》と須田が叫ぶ度に、僕たちは“君”に届いていく。でもその“君”は不確かだ。だから、ここで彼らと共に歌うのだ。
「C.S.L.」をはさみ、ゆるやかに須田が語り出す。「今回は「Mixtape」ってシングルを出して…でもこれ出たの去年なんですよね(笑)。普通のバンドなら、もっと早いペースでどんどん作品をリリースすると思うし、もっと早くツアーを終わらせるでしょう。でもまぁ僕らはこういうマイペースでやっていこう、と。そうこうしている内に半年も経って東京編のツアーファイナルを迎えるという事態になってしまった訳ですけれど(笑)。でもね、今回は東京編に向けてまだ大阪でもやってない新曲をしたいと思います。僕は君の曲になりたい、そんな曲です」。そして、プレイされたのは、新曲の「(Let Me Be) Your Song」。先ほどまでのパワフルなアンサンブルのままセンチメンタルな空気も漂い出す。しかし、この感傷もまたナードマグネットの特徴だ。僕は“君”になりたい訳ではない、“君の曲”になりたい。それは、青い祈りのようだ。
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Jun 30, 2015