【INTERVIEW】日本語パワーポップ期待の星、ナードマグネット須田(Vo/Gt)インタビュー
Interview with ナードマグネット
世界観て言葉が嫌いで。世界観て言葉にごまかされる感じが嫌いで。それって僕の中でポップじゃないなって。
Q:ナードマグネット(須田君)の音楽遍歴や影響を受けたバンドを教えて下さい。須田くんに影響を与えたベスト5と、ナードなバンドベスト5をハイ・フィデリティ風に。
須田:うちのバンドってバラバラなんですよ。みんな結構好きな音楽が似てなくて。僕とギター藤井が一番近いんですけど。僕は、WEEZER!で、ベース知子が多分スーパーカーですね。ミキちゃんに憧れてベースはじめたと。
フジ:ほー、そうなんだ!・・・なんか言動とかミキちゃんの逆行ってない?(笑)。
須田:でドラム秀村は完全にレッチリですね。レッチリとかフーファイターズとかですね。
オサム:なるほどぉ。でもパワーポップな匂いはするなぁ。
須田:藤井はなんなんやろ?
フジ:ガチガチにFat Wreck Chordsのパーカーとか着てるし・・・。
須田:まあ、メロコアも好きなんですけど・・・、やっぱハイスタなんですかね。ギターを始めたきっかけがハイスタとか言ってたような気がするんで。藤井と僕は雑食というか。手当たり次第聴くというか。
フジ:なんか、SNSやブログを通してだけど相当いろんな音楽を聴いている印象が須田君にはあって。どメジャーなバンドしかりアイドルしかり、そして対バンしたバンドの音しかり。その須田君のアウトプットがパワーポップっていうのが魅力的なんですが、どこでそんなレンジの広さが育まれたんですかね?
須田:それも、一回考えてみたんですけどね。元々楽器とかする前から音楽は好きで、J-POPのオリコンチャート上位を毎週チェックしているような感じのガキやったんですね。あとラジオ聴いたりとか。で、あんまりバンドとかロックとかを意識する前にL'Arc~en~Cielが好きになって。
フジ:超笑ったんだけど、『After School Sessions』動画。
須田:あ、もう届きました?
フジ:届いたよぉ。吹いたっす!なんか、須田君にアコースティックの動画を撮ってもらってて、その冒頭で・・・とにかくアルペジオ弾いてる時から笑いこらえすぎっていう。
須田:笑 雑い感じですが。
フジ:笑。まぁ、その辺のスタートからナードなんですね。
須田:そうですね。それが小学校6年から中学一年くらいでL'Arc~en~Cielがめちゃ好きになって。当時そのラルクがラジオ番組を持ってたんですよ。その番組の中で彼らが、今自分らが好きな洋楽とかをガンガンかけてたんですよね。レッチリだったりスマパンだったり。RadioheadとかMUSEとか大物の洋楽アーティスト。それを逐一メモってはTSUTAYAにいって(笑)。お金ないからレンタルするんですよ。当時はそれをMDに録音して。その辺でラジオの影響から色々聴いてたのが大きいとのかと思いますね。ちょうどその時代ってDragon Ashが台頭して来たり、それこそハイスタだったり。日本の音楽でもいろんな海外の影響を取り入れて新しい音楽を日本に持ってきた人が多かった印象です。そこから例えばヒップホップを聴いてみたりですとか、洋楽でもビックネームからはじめてどんどん広げていったりですとか。色んな音楽があるんだぁって思いました。
オサム:なるほど、だから色んな要素がナードマグネットには含まれているんだなぁ。アレンジとかも結構凝ってるし。
須田:で、そんな中で一番影響を受けたのがWEEZERやったんです。それまでロックってちょっと手の届かない華やかな世界の人たちの音楽やったんですけど(笑)。
オサム:わかるわかる!
須田:僕は最初グリーン・アルバムからWEEZERに入ったんですね。で、グリーンもよかったんですけど「なんか緩いGreen Dayって感じだな」なんて思いつつ、気になったのでちょっと他のアルバムを聴いてみるかと。で、ファースト聴いて、ファーストの方がいいなって思って。でピンカートンに行きついて「なんじゃこりゃ!?」って。もう、クズやんけこいつ!と思って(笑)。クズやと思いながら僕は涙流しながら聴いてたんですけどね。ロック界にもこんな人がいていいんだって思ったんですよ。
フジ:それは、グリーンから入ってファーストに流れたのは雑誌とかの影響?
須田:いや、初期がいいよみたいな。ネットで見たのかなぁ。で聴いてみるかと。
フジ:グリーンの時にありましたよね。こんなのWEEZERじゃないみたいなの。
オサム:そうそう、俺聴いてガッカリしたもんね。でも後で改めて聴くとよかったんだけど。
フジ:あったよね、あの時のガッカリ感。俺たちのWEEZERがどっか行っちまったみたいな。
須田:やっぱりリアルタイムの人達とは出会い方が違うから・・・。グリーンて逆に僕の中で思い入れ強いんですよね。
フジ:大多数の人がグリーンアルバムから入ってるんだよね。セールス的にも。でもよく戻れたね、グリーン以前に。緩いGrenn Dayとは言いつつも、録音的にも過去2作に比べてだいぶハイファイな訳じゃないですか。初期のアルバムって物足りたのかなって?歌詞とか精神的なものでショックを受けたのか?サウンド全体で受けたのか?
須田:一番ショックを受けたのはピンカートンの歌詞ですね。1曲目からもう最低じゃないですか(笑)。本当にこれはすごいなと。自分の価値観がガラリそこで変わったというか。
フジ:須田君にとっては、ガラリと変わったというより元々そういう素養があったのかな。そこで、こういうダメな感情を表現するのもアリなんだ!って発想が転換して。ナードマグネットとしての基になったみたいな。
須田:そうかもしれないですね!・・・で僕がピンカートンに出会ったくらいの時に、Going Steadyが出てきて、それが解散して銀杏BOYZになるわけですよ。銀杏BOYZはもろにRivers Cuomo的な部分を思いっきりさらけ出した感じだったので。ピンカートンに出会ったのとリアルタイムのそういうバンドの影響が一緒に来て・・・それでなんかちょっとおかしくなりましたね僕・・・。
フジ:だってね、峯田のやっていることとかって顔がかっこいいから傍から見ちゃうとアレだけど、実際かなりむき出しですもんね。その雰囲気はあるかも。
須田:銀杏BOYZはでかいっすね。僕の中では。
フジ:JENNIFERなんかもそう言ってたような。あのぶっきらぼうなとことか銀杏めっちゃ好きなそう。Green DayとかMuffsとかWEEZERみたいなのが元なんだけども、日本語でやることになったきっかけは銀杏BOYZなんてことあるんじゃないかな。英語になっちゃうような気がするんですよね。WEEZERに影響を受けたとかだと。須田君の場合は色々な音楽を聴いていたっていうのが影響しているのかも知れないけど、いわゆるパワーポップって言われているバンドなんかは不通に英語で歌うことを選択して、逆に日本語で歌うのはナードじゃねえみたいなのあるよね。ハイスタの影響もあると思うけど。Over30の世代は特に。
オサム:英語がかっこいいっていうのあるものね。
フジ:そう、だからスコリバにインタビューしたときはやっぱりそれが一番聞きたかったというか。あんたらのせいで日本には喋れもしない英語で歌うようなバンドが増えちゃったのになんで日本語やってるんだと(笑)
須田:やからね、僕らもパワーポップで行こうって決意したくらいの時にRiversが日本語で歌いだしたから、「本家がやめろ!」ってなって(笑)。やから、Holidays Of Seventeenとかもね「パイセンがそういうことすんなよ!」ってなりました。僕ら日本語っていう武器見つけたと思ったのにと。大人げない!
フジ:でも(ナードは)日本語に関しては一日の長がある気がしますね。
オサム:歌詞がね、飛び抜けてるよね。言葉の選び方がもう・・・(好きすぎて褒めるだけになる学長・・・)。
フジ:歌詞に関してはね、ナードマグネットに出会ってから世の中の歌がすごくふつうに聴こえちゃって。ナードを聴くと「流れ星」というキラキラな単語一つとってもなんかこう・・裏に悲劇があるというか呪われているように聞こえちゃうというか・・・笑。僕もナードマグネットのせいでこじれ始めてますね(笑)。
オサム:奇抜って言うんじゃなくて、須田君のキャラにハマっているよね。
フジ:同世代や下のバンドなんかは倦怠感とか刺激とかもうちょっと今時の視点で歌ってるじゃないですか。かつ普通のリスナーはパワーポップなんて文脈どうでもよいわけじゃない?そんな中で日本語で歌うバンドと同列に置かれたときに、ゆるぎないものがあるのかな?
須田:そんなんも意識し始めたのはここ2、3年の事なんですけどね。昔の音源聴くとやっぱり今時のそっちなんですよ(笑)。ちょっと尖がってみましたみたいな。「俺の世界観」みたいな感じじゃないですか。最近僕、世界観て言葉が嫌いで。世界観て言葉にごまかされる感じが嫌いで。それって僕の中でポップじゃないなって。もっとポップでキャッチーになりたいと思って。で曲がパワーポップに振り切れた時に、歌詞も意識的に今みたいな作風になってきたんですけど。今はもう、自分の好きなものはこれですって歌ってます。
フジ:その辺はTwitterでの発言にも表れているなって思う。アーティストって世界観大事にする人が多いと思うんですよ。これは好きって言わなきゃいけないところでは好きっていうし。わからなくてもわかるって言わなきゃいけないとか。でも須田君の場合は、好きに嘘がないって感じる。嫌いなものには何も言わないか・・・もしくは大声で叫んでるっていうか。
オサム:うんうん。ダークサイド須田あるよね。
須田:僕、飲み会とか行ったら悪口しか言ってないですからね。
フジ:それ、秀村君が言ってました。あいつらの口が悪すぎるって(笑)。藤井はサイコ野郎だし、知子と須田は悪口しか言ってないし、地獄ですって(笑)。
須田:好き嫌いは激しいかも知れないです。自分の中で無しだろって思ってたりするのものが世の主流になっていたりすることに対する・・・アンチみたいな気持ちはすごくあります。だから今パワーポップをこういう形でやっているっていうことが自分なりのアンチの表明というか。パワーポップ・バンドって歴史的に売れてないじゃないですか。それこそRaspberriesとかだって、あんなにいい曲書くのに結局全然売れてなくって、「レコードヒットを飛ばしたいぜイエー」みたいな曲歌ってるのに。Overnight Sensation。70年代からそうじゃないですか。だから不遇なんですよ。パワーポップ・バンドって。だから野望はあります。こんなバンドが世に出て行ったら痛快じゃないかなみたいな。
フジ:ナードマグネットはキャラ的にこじれているのでさらにハードル高いっていうか(すみません)。Raspberriesとかも結局アイドルじゃないですか。昔は。パワーポップ以前にロックのアイドルとして。
オサム:Eric Carmenはアイドルだもんね。
フジ:そうそう、だから今でいうとTOKIOがそれに近いっていうか。結果、ナードマグネットの場合はさらに二山三山超えていく強さを期待っていうか(笑)。でもその場合ある程度人を巻き込むようなキャラクターなりナードを認めさせるくらいの説得力が必要になってくると思うんですよね。バンドとしてここだけはお客さんに伝わっているなって思う事ってあります?自信のあるポイントというか。
須田:ライブとかだと、みんな楽しいと思ってくれるところかな。メロディが刺さってるというか。ナードな世界観は置いといたとしても、曲が刺さってる感は最近あるんですよね。こういう曲もあるんだっていうのがちょっとずつ広まってきているような気がしますね。すごくキャッチーにしようって意図的に思いながら作ってるんで、そこがライブでバーンて出せたらこれは伝わってるなって思いますね。
オサム:つ、伝わってる伝わってる(目がハート)。
フジ:僕は「After School」は少し前に聞いてたんだけど、その時は「あ、パワーポップのテイストも持っているバンドだな」くらいだったんだよね。PVを先に見たのかな、確か。めちゃめちゃ良い曲だなぁと思ったけれど、その時は踏み込んでいいのか確信が持てなかった。で、その後「いとしのエレノア」を聴いて、「これはヤバい(笑)このバンド、完全に振り切っちゃってる(笑)」って。
オサム:空白期間があった訳か。
フジ:そうそう。パワーポップ・バンドかもという噂を嗅ぎ付けて一度はリーチしてたんですよ笑。「After School」は何年前だっけ?
須田:「After School」のPVは大分前ですね。2、3年前・・・。
フジ:そうだよね。ビデオなり歌詞なりは当然今に通じるものがあるんだけどね。ただ「いとしのエレノア」ではっきりと分かった。どこまで狙いに行ったのかはわからないけれども、往年の名曲を超えてやるぞと野心に満ち溢れた曲だぞ、これはって。すでにあるじゃないですか、Fountains Of WayneなりWeezerなり、これぞヒット曲だってのが。そんな名曲を頭に浮かべて作ったって思ったんですよ。
須田:そうですね。ぶっちゃけそうですね(笑)。
【須田への影響ベスト5】
1.Weezer(言わずもがな)
2.Motion City Soundtrack(命を救われました)
3.カルマセーキ(大学の先輩で、彼らのライブを見てオリジナルバンドを組もうと決心しました)
4.銀杏BOYZ(色々こじらせたのは彼らのせいです)
5.L'Arc〜en〜Ciel(前述のとおり、洋楽への扉を開いてくれたので)
【ナードなバンドベスト5】
1.Motion City Soundtrack(親近感しかない)
2.Bowling For Soup(High School Never Endsは全世界のナードのテーマソングかと)
3.Wheatus(その前はTeenage Dirtbagがそうでした。あと個人的にはLemonadeも人生のテーマソングです。詳細は言えませんが。)
4.銀杏BOYZ(日本だとやっぱり峯田さんになるんだろうなーと思います)
5.ART-SCHOOL(アウトプットの仕方は違えど、「ボンクラなサンプリング感覚」って意味では木下理樹さんと峯田さんは双璧を成すかなあと)
※Weezerは実はナードじゃない説。
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Jun 20, 2014