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【ライブレポート】フジファブリック at オリックス劇場 2013.5.17

HALL TOUR 2013 VOYAGER ロングレポート

 曲が終わると同時に、山内の軽快なMC。「イエーイ、どうもこんばんは。フジファブリックです。飛ばしていくのでよろしく」
短い言葉の後には「会いに」が続いた。ギターロック調の曲だが、ドラムがパワフルに打ち出され、パワーポップ調に鳴り響く。志村正彦が遺したというサビの歌詞、<<会いにいくよ>>という言葉を歌う山内の伸びのある声と金澤のコーラスワークが光る。アウトロでは、モニターを飛び越えてアジテイトしまくる山内を見ていると、彼もフジファブリックのフロントマンになったのだなぁと改めて実感させられる。
プレイが終わると同時に、少し間が空き、オーディエンスがそれぞれメンバーの名前を連呼する。その中で1人の男性が「ソウちゃんカッコイイ!」と叫ぶと、山内が「え?」、と思わず正気に戻ったかのようにクールダウンして素で返してしまう様がキュートだった。サポートメンバーの紹介をして、今回のツアーは「5人のフジファブリック」であると明言した後に続いたのは、「自分勝手エモーション」。パワフルなサビの熱量に反して、妖しく響くシンセに呼応するかのようにステージ上部のキューブが紅くエロティックに光る。それは、続く「Upside Down」でさらに濃く表れた。またも妖しく鳴り響くキーボードに呼応するかのようにキューブには無数の矢印(筆注:「→↑」このようなシンボルが何本も)交差する。セクシーに揺れながら、トリッキーなフレーズを弾きこなす金澤がクールだ。

「Splash!!」をはさみ(余談だが、この曲のタイトルは、スウェーデンでのThe Merrymakersのスタジオでレコーディングされた4thアルバム『CHRONICLE』を通過した後の彼らでは、The Trampolinesの同名のアルバムを思わせる…などと考えるのは邪推に過ぎるだろうか:笑)、山内が再びMCへ。
「ありがとう!いや、とばしてますわ!今日は。ついこの前までチューニングしながら(MCを)話すとかギターヴォーカルの人はすごいなぁなんて思ってた人間なんですけどね…」などと、おどけつつ、今やギターヴォーカルとなった山内が、しっかりとチューニングをしながらMCを語っている様は微笑ましい。
「次の曲は『MUSIC』ってアルバムに入ってて、志村くんがPUFFYの2人に送った曲です」と続ける。
「Bye Bye」だ。またもや、電飾のバーが、メンバーの「バイバイ」というコーラスと同時に「Bye Bye」と映し出す。失恋ソングであるにも関わらず、パワーポップ調の陽気な曲調、金澤と加藤のコーラスが山内の歌う歌詞をより鮮明に浮き上がらせている。「Time」の、しっとりと落ち着いたビートをはさみ、一息ついて「こんなときは」。優しくポップで少しセンチメンタルなこの曲は、音源通りミニマルでありながらも、それがゆえにホールでも忠実にオーディエンスに届く。
 

 そんなミニマルなアウトロから「Fire」へ。アンビエントハウスのようなドラムロールのシーケンスが鳴り響く。金澤が一心不乱にプログラミングされたシーケンスを操作し、ドラムロールがバンドアンサンブルより前面に出たり後ろに引いたりとめちゃくちゃにサイケデリックな情景を宇宙船の中に響かせる。それに自身もアジテイトされたかのような山内がサビでシャウトを繰り返し、キューブも紅に蒼に暴れ狂うようにトリップを誘うかのように様々な色を映し出す。
「Fire」というタイトルだが、一見それほど熱くないように見えて、実は赤い炎よりも高熱な青い火を思わせるような演出で、間違いなく、この公演でのハイライトの一つだったろう。
それを証明するかのように、アウトロにかけて金澤はプログラミングされたシーケンスとキーボードをせわしなく操作、演奏し尽くし、アウトロでは各メンバーこそ淡々としておれど暴れ狂うプレイが物凄いグルーヴとなったフリーのセッションにもつれこむ。妖しいキーボードとギターの響き。山内はタッピングも使い、金澤は相変わらず数多くのハードウェア、ソフトウェアから音源を唸らせているが、青い光に包まれる照明の下で一貫してクールにプレイされた。

 そんなセッションが終わり、アコギに持ちかえる山内。「大阪スペシャルバージョンの『Fire』でした!キーボードは金澤ダイスケ!」と金澤の巧みなプレイを賞賛する。続けて「僕は大阪出身なんですよ。まあ実家は全然ここらへんじゃないけど(筆注:「ここらへん」は大阪市を指していると思われる。山内のホームタウンは大阪市から少し離れた茨木市である)」と語ると、ここで初めて他のメンバーもMCに加わる。金澤が「…と言う訳で(山内の)凱旋ライブなんです」と宣言。それを受けて「うん、まあここらへんじゃないけど、凱旋ライブですね。でもあんまり『おおきに!』とか言わんでしょ僕」と山内。それに対して加藤が「いや今日も言ってたよ、普通に」とツッコむと山内が「ホンマに?」と返すローカルな微笑ましいMCとなった。
続けて「フジファブリックは初めてのホールツアーなんですけど、全てイス付きじゃないですか。今からはちょっとしっとりした曲をやろうと思うのでよかったらお座りください」と山内。ここで初めて気付かされるが、ここまで10曲プレイしていたが、ほとんどオーディエンスは総立ちで、彼らとの宇宙旅行を脇目もふれず楽しんでいたのだ。
山内の言葉に対して座るオーディエンス。プレイされたのは、志村在籍時から、山内が作曲を手がけた「まばたき」と『VOYAGER』から「春の雪」。どちらもメロディアスでセンチメンタルなギターとタイトなリズム隊、落ち着いた金澤のキーボードがしっとりと染みる。「春の雪」ではライトが大粒の雪のように降り注いだ。

 ここで速報でも書かせていただいた、山内の「今やってるこのツアーはVOYAGERなんだけど、ご存知の通り、アルバムのタイトルと同じなんですね。(アルバムタイトルにもなった)『VOYAGER』は旅人という意味なのですが、自分たちもそうして旅をしながら曲を作ったり演奏したりしたいと思っていて。そして聴いてくれた皆さんと同じ旅路にもなれればと思っています。アルバムを作ってライブをやってVOYAGERは完成と思っているんです」というMC。続けて「ここからが後半戦なので立ってもらって良いですか?」と、SGに持ち替えながらオーディエンスに呼びかける。もちろんほとんどのオーディエンスが立ち上がった。
「徒然モノクローム」がプレイされるが、金澤がイントロをミスしてピッと鳴らしてしまい、山内も少しハシり気味にギターをかき鳴らしてしまう。とは言え、そんな時こそ、加藤の実直なベースラインが響く。すぐにタイミングを取り戻し、極上のパワーポップを響かせる。踊り出しそうな青いグルーヴにオーディエンスも後半戦に乗り遅れないよう、拳を振り上げる。それは、そのまま続いた「流線形」のサビで会場全体を包む一体感となって響いた。タイトなグルーヴとハリのあるヴォーカルが映える。<<流線形を描きながら>>という歌詞に呼応するかのように、何人かのオーディエンスはペンライトやケータイをサイリウム状に光らせ、間奏ではハンドクラップの嵐が巻き起こる。ドラマティックな光景だ。ハンドクラップは「Magic」でも続く。エロティックなグルーヴに踊り出さずにはいられないだろう。頭上のキューブもまさにルービックキューブのようにマスずつ動いていく。<<昼夜構わずダンスミュージック>>という歌詞通り、原色のサーカス場に連れてこられたかのような錯覚にさえ陥る。

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Jun 18, 2013

 

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