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Motion City Soundtrack

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【ライブレポート】Motion City Soundtrack at 梅田CLUB QUATTRO 2013.2.19 <PART2>

JAPAN TOUR 2013 ライブレポート


 歌い終えて、すぐにJustinが再び日本語で「僕たちはMotion City Soundtrackです!」と。続けて「僕の日本語おかしくない?昨日、『俺の日本語、ヘタクソ』って言われちゃったんだよね」と少し恥ずかしそうに英語で(『』部は日本語で)話す様が微笑ましい。
 開演早々ホットになり過ぎたステージを少しクールダウンするかのように、一息おいて「次は『Timelines』だよ」とJustinは言ったが、Jesseの奏でる繊細なキーボードの響きとインディ・ポップな曲調に反して、Justinの歌声が美麗に張り上がり、さらに激しいステージングを見せてくれた。

 間髪を空けずに「This Is For Real」でJustinが髪をかきあげながら歌い、サビでオーディエンスが飛び跳ね、最後のサビの前でJesseがキーボード前にはマイクがないにも関わらず激しく声にならないシャウトを張り上げた。かと思うと「When You’re Around」に続き、間奏ではJesseが前曲の興奮も覚めやらないままTonyが叩き出すタイトなリズムに思わず、自分でも横にあるクラッシュ・シンバルを素手で叩き出しそうな勢いだ。
 ここで気付いたことがある。それは、今までのステージ以上にMatthewが力強く、コーラスに参加し、序盤からその存在感を表していることだ。少なくとも、僕が今まで観てきた彼らのショーにおけるMatthewのステージングは、ライブの始まりは実直なプレイに徹し、終盤になるとバンドのグルーヴを支えつつも抑えていたエネルギーを爆発させるかのようにダイナミックにプレイするようなものだった。しかし、今回は、コーラス・ワークをはじめとして序盤からクールながらエネルギッシュに暴れ回っている。この日の彼らのステージがのっけからパワフルに見えた理由は、実はMatthewのステージングにあったのかも知れない。
 
 「The Coma Kid」がプレイされ、Justinの美麗なコーラスが響き、間奏では再びTonyのドラミングに合わせオーディエンスのハンドクラップが重なる。曲が終わると同時に、Justinはおどけたように「みんな準備は良いかい?」とニヤリと一言。その言葉から、激しい曲へ流れ込むかと思いきや、ゆるやかで哀愁を感じさせるキーボードのメロディが美しい「Last Night」へと続いた。Tonyは片手ではシェイカーを降りながら片手でスネアとハイハットを刻む、技巧派なプレイを見せてくれたが、案の定、曲終盤では哀愁をパワーポップの色で埋めるかのようなパワフルなプレイに。

 Justinが一息ついて、「サンキュー」と言ったかと思うと、そのまま「Broken Heart」のミュートされたギターとJustinの美声が響く…と思いきや、ここで思わぬハプニングが起きた。
「Broken Heart」は、Justinのギターとヴォーカルから始まり、途中からドラムが加わり、一気にパワフルなバンドアンサンブルになだれ込む曲である。今回もそのように、Justinは確信的な笑みとともに歌い出すが、Tonyのドラムが戸惑いながらしか、付いてこられていない…上に、Matthewが「おい、ちょっと、Justin!Justin!」とツッコミを入れつつ、止めに入る。しかし、プレイに集中するあまり、Justinは隣のMatthewのツッコミに気付かず、本来バンドアンサンブルが入る箇所の寸前まで歌い切ってしまい、他のメンバーが入ってこないことに気付き、演奏は中断。ここでMatthewが改めて、落ち着いて「Justin?セットリストを見てみるんだ」と諭し、Justinは足下のセットリストが書かれたペーパーを一瞥、ハッ!それを見てすぐに、それまではMCでは黙っていたJoshuaも静かに一言、「一曲飛ばしちゃってるぜ」とさらにツッコむ。ミスに気付いたJustinは恥ずかしがって、「うわー!またやっちゃったよ!たまにこう言うことってあるんだよね!いやはや、マジでこんな感じでやっちまうなんてさ!ごめんね…」と早口の英語でまくしたてる。そんな光景に思わず、オーディエンスの火照った身体もクールダウンしつつ、「Justin、ミスなんて何の事!大丈夫だよ!」と言わんばかりに優しく受け入れる様が微笑ましい。

 さて、改め直し、当初のセットリスト通りプレイされたのは「L.G. Fuad」。たしかに、Justinのミュート・ギターと歌い出しで始まる曲として構成は似ていなくもないかもとさらに笑みがこぼれてしまったが、赤い照明に照らされたJustinの口から繰り出される言葉の数々は切なげに届く。照れ隠しかのサビでそれまでよりギターを振り回すJustinが可愛らしいが、それでもしかし、そこにのる残酷なまでのセンチメンタルな嘆きにも似た歌詞が響き渡る様が清冽だ。そして、仕切り直しの「Broken Heart」。赤の照明が緩やかにピンクに変わり、歌詞の通り別れの切なさと情欲を掻き立てるかのようだ。2番のメロでは、Joshuaが目前のオーディエンス一人一人とアイコンタクトを取りつつセンシティヴなコードを弾く様もまた、その切なさに拍車をかけるかのようである。
 これが、今日のハイライトだろうか…などと勝手に考えていると、センチメントは止まらなかった。Justinが続けて、「次の曲は昨日リクエストをもらってた曲で、できそうだからプレイすることにしたんだ。リクエストをくれたのは誰かな?それじゃ…やるよ。『Even If It Kills Me』」と。思わぬ選曲にまばらながらも拍手が巻き起こる。「L.G. Fuad」、「Broken Heart」と続いたセンチメントを引き継ぎ、最期の時に一人の部屋で思わず嘆いてしまうかのような憂愁が襲う。”僕は自分が心を失ってしまわないか不思議なんだ。僕はしばらくトライしてみて…でも諦めてしまった。陽が落ちた後の冬は殺人鬼のようだよ…(筆注:訳は青野によるものです、ご了承下さいませ)”という2番の歌詞とJustinの繊細なアルペジオがあまりにも切ない。パワフルなサビから”だから僕は元いた地点に戻りたい、そしてそのためならどんな事だってするのに…たとえそれが僕を殺してしまうようだったとしても”という危なげなアウトロへと繋がる様は、まさにパワフルなのに静謐と言ったようなアンビバレントでスリリングな一瞬であった。
 その危なげな切なさもそのままに、『Go』からのラストソングである「Floating Down The River」へと流れ込み、Justinはさらに髪をくしゃくしゃにかき乱し、もはや、化粧をしていないThe Cureのフロントマン、Robert Smithのような無造作でワイルドなヘアスタイルになってしまっているのが可愛らしい。また静かになり、おもむろにTonyのリムショットとシンバルが静かに鳴り響く。「Hold Me Down」だ。当日はまさに「Hold Me Down」のMVのような冷え込む日だったこともあり、その覆い尽くす繊細な感性とJustinの美声ゆえに思わず物思いに耽ってしまう。

PART3につづく

reviewed by keisuke Aono
photo by 森リョータ
(※写真は東京公演のものです)


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Feb 21, 2013

 

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