【ライブレポート】All Time Low at 高円寺High 2012.10.07
「World Triptacular」
メジャー・アルバム『Dirty Work』を経て再びインディーに戻ったAll Time Low。今回、アルバム『Don't Panic』リリースを前に三日間で日英米三カ所を回るという前代未聞のツアー、「World Triptacular」を実現させた。今年、PUNKSPRING 2012で来日済みにも関わらず、そのような挑戦に日本が選ばれたのはなんとも嬉しいことだ。日本のヴェニューは高円寺High。彼らのように全米でトップ10に入るアーティストが300人規模のライブハウスで見られる事は果たして幸か不幸か、ただチケットは予約開始からわずか1分〜2分で売り切れたとのこと。空港からライブハウスに直行するという強行スケジュールから開場が遅れ、会場外で待たされることになったファンたちではあったが、プラチナムチケットを手にする彼らはポジティヴなオーラに満ちあふれていた。
本来の開演時間から遅れる事50分ついにメンバーがステージに現れる。トップバンドの風格というよりは、オーディエンスと何ら変わらない若者、いたずら好きの気のいい兄貴といった風貌は相変わらず。ただ、ステージ上の彼らはいよいよ始まらんとする未知なる挑戦に興奮を抑えきれないようだった。公演は彼らもお気に入りであろうアルバム『Nothing Personal』の定番曲「Lost in stereo」でスタート。ヴェニューの外、そして中でしばらく待たされたフラストレーションも吹き飛ばすほどに客席から巻き起こるダイブと大合唱の嵐は、2曲目、『Dirty Work』でも屈指のシンガロング・トラックである「Forget about it」で早くも絶頂を迎えた。
「日本に着いたのたった3時間前だよ?信じられるかい?」18時間かけてやってきてそのままライブという過酷なコンディションのメンバーだが一切疲れを見せずアレックスはオーディエンスをまくしたてる。「今日は俺たちのニュー・アルバム『Don't panic』のリリースのお祝いだろ?まだソールドアウトしてないなんてことないよな!?(笑)」すでに会場の熱気は2Fフロアにも水滴がにじむほどになっていたが、彼らのテンションに汗だくのファンも一糸乱れず付いていく。
気がつけばアレックスの頭にはかわいらしい王冠が輝き、ジャックはマスクを着用。最前列の女性ファンからは悲鳴とも声援ともわからない声があがる。ギターのマイク・スタンドには大量のブラジャーがかかっており、定番の下ネタMCも炸裂。ただジャックは「ケガするなよ」ともみくちゃのオーディエンスを気遣ったり「水が欲しいかい?」と言ってはペットボトルを客席へ投げ入れ「みんなでシェアするんだよ?」と要所でファンを気遣っていた。長身でイケメンながら三枚目キャラ、とにかく陽気で演奏中にもメンバーにちょっかいをだしたりと親しみやすい上に気遣いまでできる彼はつくづくバンドに一人は居なくてはならないタイプだ。おそらくこのステージの雰囲気の良さは、高校の同級生という以外にこういうメンバー間の関係からも来ているのだろう。
ダンスパーティーしたいか?と続けた「Time Bomb」。「Forget About It」や「Guts」でも感じたことだが前作『Dirty Work』からの曲は浸透度も高く盛り上がりも派手だ。『Dirty Work』はButch Walkerをプロデューサー勢に起用したり、残念ながらこの日は演奏されなかったがRivers Cuomoと共作した必殺のパワーポップ・ナンバー「I Feel Like Dancin'」が収録されるなどポップスと揶揄されるほどキャッチーなアルバム。パンク畑の彼らが経験したメジャー・フィールドでの活動はファンにも受け入れられたようで、会場全体が歌い、手を挙げ、ジャンプした「Time Bomb」は間違いなくこの日のハイライトだった。初期の彼らのライブでは、ミドルテンポのナンバーではしばしば客席が大人しくなることも見受けられたが、この日のライブで彼らがすでに<ポップパンク>という枠組みだけを求められているバンドではないことが証明されたと思う。
アンコールではアレックスがギターをローディーに放り投げてのハンドマイク・パフォーマンス。感極まったダイバーがメンバーに抱きつくアクシデントにも、むしろこの日、この場でしか会えないファンと積極的にコミュニケートしようとしているようにすら思えた。そして彼らは「Weightless」で「最高の週末じゃないかもしれないけど、素晴らしい一年にしてみせる」と僕らに向けて歌い、最後は皆と「もう一分たりともここで無駄にしたくない」と叫んだ。
三日間で日英米三カ所を回る── 突拍子もないと思っていた彼らのアイデアが、アンコールで演奏されたこの曲でようやく理解できたような気がした。一日だって同じ日はない、バンドが永遠に続く保証はない、だから決して時間だけが過ぎて行くのをじっと見ているわけにはいかないんだよ、と。
そして、僕らもまた「彼らと過ごす時間を一分たりとも無駄にしたくない」と全力でライブにぶつかってやろうと思うのだ。
セットリスト
Lost In Stereo
Forget About It
Time-Bomb
Guts
Poppin' Champagne
Jasey Rae
Coffee Shop Soundtrack
Damned If I Do Ya (Damned If I Don't)
Heroes
For Baltimore
The Reckless & The Brave
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Weightless
Dear Maria, Count Me In
※文中の動画は日本公演のものではございません
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Nov 1, 2012