【ライブレポート】Fountains of Wayne at 恵比寿LIQUIDROOM 2012.03.30
Fountains Of Wayne Japan Tour 2012
ニューアルバムがリリースされたら試聴もせずに必ず買ってしまうアーティストがいる。もちろんクオリティも高いし大好きだからなのだが、それ以上に楽しい思い出や切ない思い出がその音楽と共に体に刻み込まれているからなのだ。もう一生離れられないバンド。2000年代パワーポップファンにとってそんなバンドの一つであるFountains Of Wayne。新しい季節が始まる気配と共に来日を果たした彼らの笑顔に溢れる来日公演をレポートする。
会場は平日という事もあり少し余裕があって過ごしやすい感じ。それでも、Fountainsクリスのかつてのバンドメイトであり、Fountainsのアルバムにもゲスト参加している盟友Mike Violaがサポートアクトを務めるとあって、客席も本編前に既に良い緊張感が漂っていた。Mike Violaのアクトについてはこちら(【ライブレポート】Mike Viola at 恵比寿LIQUIDROOM 2012.03.30 (Mar 31, 2012))で別途レポートさせていただいたので割愛するが、Mike Violaの隙のない演奏に会場は十分温まっていた。
Mike Violaの静かに燃える演奏が終わりしばらく間が空いた後、遂にメインアクトFountains Of Wayneが登場した。
クリスの「コンニチワ〜」という言葉と共にアルバム「Welcome Interstate Managers」からアップテンポな「Little Red Light」でスタート。オーディエンスは一気にトップギアに。クリスは茶色の帽子にチェックのシャツでギターはGRETSCH。アダムは相変わらず地味な黒いシャツとお気に入りのGRETSCHベース。ジョディとブライアンは何だかストーンズばりのロングヘアでルックスだけ見ると60年代のバンドのようだった。特にジョディの風貌はキース・リチャーズそのものだ(現に彼はストーンズが好きらしく、アフターパーティではミック・ジャガーのモノマネをして実に楽しそうでだった)。運悪く、一曲目でジョディのギターの弦が切れてしまったのだが、ローディーさんが変わりのギターを持ってきても取り替える気はさらさら無かったらしく、「野暮な事するなよ」とばかりに顎で断り、男前に一曲目を演奏し切った。その後一瞬でギターを交換し、「Someone To Love」を弾き始めるとオーディエンスからは大きな歓声が。音量の上がる「He calls his mom〜♪」の所で大きく手を突き上げ、一緒に歌うオーディエンスが沢山いる。これがFountains Of Wayneのライブなのだ。間髪入れず「Denise」。サビ部分ではみんなで手拍子する一体感。更に盛り上がる客席。ここで一息ついて「アリガト〜、東京に戻ってこれて嬉しいよ」とニッコリし何度聴いてもイントロでホロッと泣きそうになる永遠の名曲「Mexican Wine」。イントロだけでオーディエンスからは大きな拍手が。間奏のギターソロでも大盛り上がり。こんなキラーチューンを4曲目に惜しげも無く出せるほどFountainsは良曲が多いのだ。間を開けずに「Survival Car」でたたみかけ、ホールは熱狂に包まれた。それでもFountainsのオーディエンスは非常にジェントルで、暴れたりモッシュなんてことな一切ないのだ。みんな笑顔でステージを楽しんでいてとてもいい雰囲気である。
ここでクリスがアコギに持ち替え、アダムが「ニューアルバム・・・といっても最新じゃないんだけどちょっと前にリリースしたレコードからやるよ。」と何だか恥ずかしそうに言った後、「The Summer Place」をスタート。正直に言うと新譜「Sky Full of Holes」は<ファンが持つFOW像>からしたら若干地味な出来だったと思う。でも、キャリアの長いバンドがちょっとカントリーテイストに傾倒するのはよくある話だし、クリスとMike Violaが一緒にやっていたバンドだってカントリー寄りのバンドだった訳で、彼ら流の進化はファンとしては十分納得できる。でもやっぱりFOW。この新譜がじっくり聴くと本当に味があるのだ。Fountainsの持っているポップなメロディはそのままにちょっと大人っぽい渋さが加わって心地良い。ライブ向きの曲はそれほど多くないけれど、それでも往年の名曲だけでなくちゃんと新譜から演奏して現在進行形のバンドの姿を見せてくれるのがとても嬉しく感じた(ホントはもっともっと新譜から聴きたかったけれど・・・)。続いて同アルバムから「Richie and Ruben」。この曲こそ演奏もメロディの暖かさもまさにFountainsだと思う。オーディエンスもちゃんと予習していて、手拍子が入る所はキッチリ合わせていたし本当に愛されているバンドだと再確認。「この曲は随分演奏していないんだけど、東京でビデオクリップを撮った曲なんだ・・・100年前にね」と冗談をいってお客さんを沸かせた後、「Troubled Times」!!客席からは思わずため息が。
ここで「誰か手伝ってくれないかな?」とパーカッションをオーディエンスから募集。3人のサポーターをステージに上げアダムがピアノの前に座る。選ばれたサポーターが客席に手を振ると温かい拍手が巻き起こる。ジョディはベースに持ち替え、ブライアンはボンゴを手に持つと「Hey Julie」を演奏。サポーターもとても上手に演奏をしていて一体感が更に高まる気持ちのいい時間だった。曲が終わるとアダムはサポーター、一人一人と握手していた。そして「ニュージャージーの町を歌った曲だよ」といって「Hackensack」。この曲はサビのコーラスが本当に好きだ。そして再び最新アルバムから「a dip in the ocean」これも是非ナマで聴きたかった曲の一つだ。その後間髪入れず「Leave The Biker」一体このバンドは何曲キラーチューンがあるんだろう。ベースラインがアルバムとちょっと変えてあったのもニンマリ。更にちょっとOASISぽい「Bought for a Song」を演奏。この曲もベースラインがとても好きだ。アダムのアレンジが冴える名曲。続けて「radiation vibe」。ジョディが手拍子を煽るとオーディエンスが大きく応える。サビの「Baby,Baby,Baby...」の所は大合唱となった。そして、間奏ではアダムとクリスが何やら耳打ちしお決まりの70'sマッシュアップ!今回はTears For Fearsの「Mad World」、そしてPaul McCartneyの「Jet」が聴けて嬉しい。その後再び「radiation vibe」に戻り「アリガトー」と熱狂の本編が終了した。
当然これで終わるわけもなく、オーディエンスの盛大なアンコールに応え再びメンバー登場。「ちょっと悲しい曲をやるよ」と「Cemetery Guns」をしっとり演奏。客席がしっとりした所で駄目押しに「I-95」。イントロワンコードでこの曲だとわかって思わず叫んでしまった。せっかくだからMike Viola入りのバージョンが聴きたかった気もするがそれは贅沢というものだろう。アダムはピアノ、ジョディがベースという編成。「今夜は後でジョディの部屋でパーティするからね」と冗談を言い、取って置きの「Stacy's Mom 」。客席は再び熱狂の渦と化した。さすがにこれで終わりかと思ったのも束の間、最後の最後で「Sink to the Bottom 」。2番のAメロはオーディエンスにがっつり歌わせて盛り上げ、ライブ終了となった。すべてのアルバムから満遍なく選曲しファンサービスたっぷりな暖かいライブだった。
大阪・名古屋・東京2daysとセットリストは毎日変えてあり、工夫を凝らした内容になっている。東京公演2日目にも参戦したのだが、こちらは他の日程同様アンコールで本ツアーならではのFountains Of Wayne with Mike Violaを見ることができた。2日目のお昼にMike Violaへインタビューを敢行した際に、折角だからThe Mercy Bucketsの曲を聴きたいとリクエストしてみたところ「今日はやると思うよ」と言っていた通り、「Fire in the Canyon」を演奏してくれた。最終日はお客さんの入りも最高潮で、会場は後ろの方まで満員だった。セットリストも今回の来日で一番多い19曲と満足の内容であった。Fountains Of Wayneのライブは演奏自体はまったく隙がない演奏とは言い難いけれど、そのキラーチューンてんこ盛りのライブは彼らならではのものだと思う。そして彼らをずっと愛そうと決めた(もしくは虜になってしまった)暖かいファンへの心遣いが感じられる心のこもったライブだったんではないだろうか。(ワタナベオサム)
セットリスト
Little Red Light
Someone to Love
Denise
Mexican Wine
Survival Car
The Summer Place
Richie and Ruben
Troubled Times
Hey Julie
Hackensack
A Dip in the Ocean
Leave the Biker
Bought for a Song
Radiation Vibe
_____________________________________
Cemetery Guns
I-95
Stacy's Mom
Sink to the Bottom
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Apr 3, 2012