【ライブレポート】The Posies at 渋谷クアトロ 2011.06.01
「The Posies Japan Tour 2011」
2005年に『Every Kind Of Light』をリリースして以降、新作のリリースも無く、来日も行われてこなかったThe Posies。彼らの新作『Blood/Candy』の国内盤がリリースされることが決定し、そのリリースから2ヶ月後とアナウンスされた来日公演。東京のClub Quattroと大阪のdigmeout caféでのショーが決定し、前者はバンドでのフルセット、後者はフロントマンのJon AuerとKen Stringfellowによるアコースティック弾き語り(とは言え、その実態はKenによると「俺たちのアコースティックはエレキさ!!」とのことで、エレクトリックでの2人の公演だったが:笑)により展開された。
ここでは、前者の東京公演についてレポートしたい。
当初は、往年のファンが多数集まるイベントになるのかな…なんて、頭の片隅で思っていたものの、オーディエンスの列を眺めていると、そんなことは全くの杞憂。若いリスナーたちも男の子、女の子…と続々、集まっていた。Posiesの影響力はまだまだあるんだなぁ…なんて、感慨深くなりながら(僕もオーディエンス層から見れば「若いリスナー」の部類に入るとは思いますが:笑)少し遅れてフロアに入ると、後ろまで人がいっぱいの満員状態。「いやいや影響力がまだあるなんて次元の話ではないぞ…」なんて思っているとすぐに、暗転。
4人のメンバーがゆったりとステージに登場する。どのメンバーも久し振りの来日公演初日とあってか、ピリピリしながらも殺気立つようなオーラさえ発していたが、それこそがPosiesだ。オーディエンスも期待の目で食い入るようにステージを見やる。そんな中、幕開けにプレイされたのは、『Blood/Candy』でも1曲目である「Plastic Paperbacks」。音源では、ex-The StranglersのHugh Cornwellをコーラスに招いていたこの曲だが、ライヴではKenの叫びにも似た力強いシャウトがメロウなメロディを彩ると同時に、Darius Minwallaの実直なドラミングがそれを支え、幕開け早々、ギアが入りまくっている。それを証明するかのように、続いたのは名盤、『Frosting On The Beater』のリード・トラックの一つ、「Flavor Of The Month」。Jonの美声の健在っぷりに驚かされるも束の間、光が飛び散るようなエヴァーグリーンなギターソロと同時にKenが飛び跳ね回り、暴れる暴れる。瑞々しいパワーポップを奏でながらも、ステージングは、’90sのシアトルのバンドらしく熱気のあるもの、というPosiesの側面も相変わらず健在のようだ。「Please Return It」になっても絶唱は続いた。
「日本のために」という短いMCを挟んでプレイされたのは、「Sad To Be Aware」。物哀しいメロディに合わせてKenのアシメヘアーが切なげにたなびく様も印象的だった。ここで、ゲスト・フィメール・ボーカルとして、Mice Parade一派のエレクトロニカ・アーティスト、Carolineが招かれ、「Licenses To Hide」へと続く。実は、この曲、彼らのツアーでも、その土地土地の女性アーティストをコーラスに招いて披露されるのが、恒例になっているのだ(ちなみに、大阪公演では、共演したPredawnがその座を務めた)。あくまで、シックな音色と力強いリズム隊の開けていく様が音源では端麗だったこの曲、前曲の雰囲気も合わさってか、Carolineのそれが手伝ってか、どこか儚げな側面が強調されていました。「彼女のために歌うよ」とのKenのMCの後に間髪入れず「So Caroline」に続く。一見、シャレみたいな選曲ながら、先までのメランコリックな空気を覆すかのように、力強いドラムとJonの美声が重なり合い、どんどん陽光に満たされていくかのような感覚さえ覚える。すると、Kenのシャウトと同時に「Everybody Is Fucking Liar」が!音源でさえ、タイトル通りの熱気がまじまじと伝わる曲ではあるが、ステージングもまさにそれを保ち、JonとKenはステージを縦横無尽に爆発的に飛び跳ね暴れ回る。オーディエンスもこうなると、振り上げた拳を下ろすことはない。続いたのが”I don’t have it now”という嘆きが印象的な「Throwaway」、彼らの名曲中の大名曲「Solar Sister」と続くと高まるボルテージは収まるところを知らない。
高まった熱気を冷ますかのように、「The Glitter Prize」と「For The Ashes」をプレイ。後者は、「日本のスタッフに捧げるよ」との言葉と共に演奏され、Kenは重々しくシンセを奏でる。そのまま清涼感溢れる「Enewetak」へ。間奏でのKenのハイ・トーンが瑞々しい。そのまま哀愁漂うJonのギターは、「Conversations」を奏でる。先のKenに負けず劣らず美声が心地良い。
「She’s Coming Down Again!」をはさみ、彼らの出世曲でもある「Dream All Day」をタイトルに似合わないダイナミックな演奏を力強く叩き付け、本編が終了。Kenがすかさず「(日本語で)アリガトウ!」と叫んだ。
アンコールでのMCは、格別に印象的なものだった。「震災について、本当に僕たちは心配してたんだ。でも来日を取りやめたいなんて思いは微塵も起こらなかった。『音楽はエンターテインメントの一つに過ぎない』なんて言うけれど、実際にそうなんだけど…僕たちの音楽が癒しのプロセスに繋がればと強く思って止まないよ。」そんなKenの言葉の後に演奏されるは、THISTIMEの震災チャリティー・コンピレーション『Together We Are Not Alone』(このアルバム・タイトルは、Jonが考えたものだ)に収録された、「Tomorrow We Are Not Alone」。KenとJonによる祈りのような歌声と美メロに彩られた会場は、間違いなく「癒しのプロセス」へと踏み出していくかのようだった。
続く「I Guess You’re Right」では、絶唱を取り戻し、「Definite Door」では手拍子が巻き起こる。「Burn & Shine」の焦燥感に満ちた演奏で、アンコールは幕を閉じる。
ダブル・アンコールにもつれ込み、「You’re The Beautiful One」が披露されたかと思うと照明が目映く光り、KenとJonの端麗な歌声が、このショーを祝福するように鳴り響いた。
Posiesの熱気溢れる面だけでなく、日本を労る優しい一面や、儚げな一面、そして何より、いつまで経ってもエヴァーグリーンな狂騒を鳴らしてくれる一面など多くの側面を垣間みることができる素晴らしいショーだった。これは、彼らだけでなく、スタッフの尽力や、満を持して集まったオーディエンスたちが無言の約束の下に、この来日公演を成功させようと言う、陽性のバイブスを共有し合っていたことが大きかったと思う。そういった意味では、できるだけ安易に使いたくない言葉ではあるが、それでも、ただただ愛に満ちあふれたショーだったと言い切れる。冒頭に、「Posiesの影響力はまだまだあるんだなぁ…」なんて書いたが、この公演を見た多くのキッズたちもまた、これから影響を受け続けるだろう。昔の影響をいつまでも保持しているのではない、これからもリアルタイムでたくさんのバイブスを僕たちに与え続けてくれるだろうということがまじまじと伝わるライヴだった。
彼らも満面の笑みでこう語っているようだ。「It’s Great To Be Here Again!」なんて。
セットリスト
1. Plastic Paperbacks
2. Flavor Of The Month
3. Please Return It
4. Sad To Be Aware
5. Licenses To Hide
6. So Caroline
7. Everybody Is A Fucking Liar
8. Throwaway
9. Solar Sister
10. The Glitter Prize
11. For The Ashes
12. Enewetak
13. Conversations
14. She Is Coming Down Again!
15. Dream All Day
En:1
1. Tomorrow We Are Not Alone
2. I Guess You’re Right
3. Definite Door
4. Burn & Shine
En:2
1.You’re The Beautiful One
1
Sep 2, 2011