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Sloan “Commonwealth”

2014 Yep Roc

POWERPOP ACADEMY総出のクロスレビュー!
今回はSloanの新アルバム「Commonwealth」



Sloan/Commonwealth
ライブ盤を除くとオリジナルアルバムとしては実に11枚目、ファーストアルバムSmearedリリースから数えて22年目にドロップされたカナダのパワーポップバンドSloanの新譜である。今回は前評判通り四人のソングライターがトランプのマークに割り当てられ、4面に分かれた独特のコンセプトアルバムになっている。当初はレコードのA面B面をそれぞれ担当するという噂だったので、二枚組イメージだが、若干曲数が少ないイメージではあるが…。

♦︎Jay Side
四人の中で一番レコードオタクであり、一番ジェントルなJayの担当。今のSloanメンバーの中では一番の中心人物と言ってもいいナイスガイJayがトップを飾るのは当然の流れであろう。Chrisと並んで最多の5曲参加である。Between The BridgesでのChris作Summer's My Seasonで確立したSloanの鍵盤入りサイケソングの流れを組む短いイントロソングWe've Come This Farに始まり、同じくBetween The BridgesのDon't You Believe The Word辺りからのJayお得意のピアノ入り爽やかポップソングYou've Got A Lot On Your MindなどJay節は全開である。バンド内での立ち位置も御大Paul McCartonyの雰囲気に大分近づいてきているなと思ってしまうJay。Cleopatraのギターポップ感はもう誰も追随出来ない境地に達したと思う。特にギターソロなどプレイがいちいちニクい作りになっていて聴きごたえがあるのだ。
❤︎Chris Side
お得意のギターカッティングからストリングスを絡めたこちらもサイケポップな趣のCarried Awayで始まる一番のハンサムガイChris Side。5曲中の間3曲は鍵盤入りのバラード的な曲となっている。この辺りのJayに影響を受けたのではないかと思われるような作風もしっかりと板についてきていてソツがない。5曲目You Don't Need Excuses To Be Goodは堂々たるロックナンバー。Navy Blues辺りにPatが発明したManey City Maniacsなどの曲の系譜を受け継いだライブで観たい1曲。惜しむらくはChris Sideはギターが割に一辺倒な印象。ま、ベーシストだし笑。
♣︎Patrick Side
四人の中で僕の一番好きなメンバー、Patrickことパトやん Side。今作は4曲の書き下ろし。エッジの効いたギターカッティングで気持ちいいKeep Swingingなど往年のパト節ナンバーも含まれてはいるが、全体的に暗め。恐らくは今のパトやんはサイケロックやオールドパンクに傾倒していると思われる。細かく聴くとギターアレンジや空間の表現は彼らしい重厚な作りで良い。
♠︎Andrew Side
最後にドラマーAndrew Side。たった1トラックだか17分もある大作を放り込んできた。中身はというと実験的な数曲を繋げた不思議なトラックに仕上がっている。ただしプロデュース面の問題なのか押しが弱い。もう少し派手なアレンジを施すと聴きごたえがあると思うのだが。端々に良いパーツが沢山散りばめられているので少し残念。彼の性格なのか一筋縄では行かない雰囲気は感じることができる。

とにかく、このアルバムはSloanという四人の優れたソングライターのソロアルバムなのだ。だからそれぞれがやりたい事をやっているし、統一感もあまりない。でもソロアルバムだものそれは許されて良いと思う。バラバラでリリースしなかったのはSloanの四人の仲の良さなのか縛りなのかはわからないが…。
1992年から最前線で活躍してきたSloan。かつてのU2がそうだったように自主レーベルを立ち上げ、時代時代でそのスタイルを変え続けてきたこのモンスターバンドの歴史から見れば、本作Commonwealth は次の時代を模索する姿なのかもしれない。オルタナ全盛期の彼らの音源(DGC Rarities や音楽雑誌の付録)に比べれば随分とポップで聴きやすい仕上がりである。次は一体どう変わってくれるのか?さらなる進化に期待したい。

<ワタナベオサム>





私は“声と歌い回し”がストライクゾーンを外れると、とたんにその音楽への興味を失うという大変困ったリスナーなので、4パートにくっきり分かれたこの構成はきびしいです(Jay Fergusonさんの歌声&曲がまさにストライクで、6曲目以降は急激にテンションが下がるという……)。でも、がんばって聴いてみたら(←コラ!)、かっちょいい曲がザクザク!!じゃありませんか。特に最後の長尺曲「Forty-Eight Portraits」がツボで、何度もリピートしています。

<Miyuki Kimura>





4人の各メンバーの魅力とSloanという集合体としての魅力の両方が味わえる会心作!♪

本国カナダでは人気、実力、ルックスを兼ね揃えた国民的バンドSloan。しかし、日本での知名度、認知度は未だに高いとはいえないのが何とももどかしいところ。
実際ここのところの数作では、4人のメンバーが作る曲をアットランダムにノンストップでつなげていくメドレースタイルが定着していたため、一曲一曲の印象が薄くなって少々分かりにくいものになっていたのも事実だ。
通算11枚目となる最新作『Commonwealth』では、Pink FloydやKissなど、複数のソングライターを配するバンドが時折やる手法で、各メンバーをフューチャーした曲たちを片面づつ聴かせるというもので、今まで見えにくかった各メンバーの個性がよく見える意味でも興味深い手法だ。
今作は4人のパートがそれぞれトランプのスートで分けられており、ダイヤサイドはメロディアスで軽やかなジェイ、ハートサイドはマッカメロディに王道ロックなクリス、クラブサイドはハードロッキンなパトリック、そしてスペードサイドはシニカルでちょっぴりひねくれた作風のアンドリューというように、ややもするとソロの寄せ集めになりそうなところをしっかりとSloanというバンドの統一した魅力として昇華させているところはさすがだ!

個人的オススメは、軽やかなジェイの「You've Got A Lot On Your Mind」、センチメンタルなクリスの「Carried Away」、『Navy Blues』の頃の作風を彷彿させるパトリックの「Keep Swinging (Downtown)」、そして、聴けば聴くほど味わいが増すアンドリューの「Forty-Eight Portraits」など、隠れ名曲がゴロゴロ詰まっている。 

…そろそろこの目で彼らの円熟のパワーポップを体感したいものだ!

<Jun@The Hand Claps>





メンバー4人全員が曲も書けて歌も唄えてというバンドの夢(?)「ソロ×4」、根っからのSloan好きだったら各メンバーの音楽的嗜好をあーでもないこーでもないとか言いながらスゴく楽しめると思うんですよ。はっきりと「個」を打ち出した楽曲が並んでいるんだけど、共通の大きな大きなバックボーンを感じてニヤッとしてしまいますしね。でも、何の前知識もなく聴いたり初めてSloanに触れる方には、このきっちり分かれた曲順がむしろ逆効果な気がします。もしかしたらLP2枚組でそれぞれのA-side、B-sideっていう構成だったらまた印象も違ってたかも。あの裏返すって行為(歳がバレますが)、気持ちのリセットにもなりますからね。惜しむらくはデジタル時代ということ?!

同じ遺伝子から派生したこの異なる4つの個性が1つになった時=『Commonwealth』が、Sloanの魅力なんだな、とあらためて実感。

<森ヒロユキ@PowerPopRevival/BOTB>




Sloanの、通算11枚目となるニューアルバム。前作「Double Cross」は結成20周年を記念した特別な作品で、ひとつの到達点を迎えていたこともあり、今作はどうなるのか?期待半分不安半分といったところでした。

ところが、彼らはまた我々に新鮮な驚きを与えてくれることになります。メンバーごとの作品を各サイドに振り分けるという構成は今までにない面白いアイディアだし、またSloanにしかできないことですね。ラストを飾る、15分以上の長尺ナンバーも、彼らにとっては初の試みだと思います。

そうなると、今度は「ソロ作品の寄せ集めになるんじゃないか?」なんて不安も出てきますが、そこは結束の強いSloanです。曲間のないメドレー風な曲も相変わらず多いし、統一感を損なってはいないと思います。各々の作品の根底にビートルズからの影響を感じさせることも、あるいはこの統一感に一役買っているかもしれません。

とはいえ、やはり今までと比べるとやや特殊な構成をしているのは確かですので、「初めてのSloan」には向かないかもしれません。しかし、その分彼らの魅力がギュッと詰まっていて、Sloanというバンドをより深く堪能できる一枚と言えるでしょう。

<内田 晶悠>




THISTIME Online Storeで購入

01. We've Come This Far
02. You've Got A Lot On Your Mind
03. Three Sisters
04. Cleopatra
05. Neither Here Nor There
06. Carried Away
07. So Far So Good
08. Get Out
09. Misty's Beside Herself
10. You Don't Need Excuses To Be Good
11. 13 (Under A Bad Sign)
12. Take It Easy
13. What's Inside
14. Keep Swinging (Downtown)
15. Forty-Eight Portraits