A Great Big World “Is There Anybody Out There?”
2014 (SMJ)
「なんやめっちゃダーク雰囲気になったなぁ…」
昔、自分のバンドでDaryl Hall & John Oatesの「Private eyes」をカバーしたことがある。確か、Presidents of U.S.A.のカバーしたBugglesの「ラジオ・スターの悲劇」路線で、古いポップソングをパワーポップアレンジでカバーしたかったからだったと思う。やってみてわかったことは、あの曲はギターをパワーコードのみでやると、なんだかおどろおどろしいダークサイドな曲になってしまうのだ(単にスキルの問題もあったと思うが・・・)。
本作、A Great Big Worldの「I Really Want It」を初めて聞いた時正直ぶっ飛んだ。なんだこの素晴らしくポップな曲は!?ピアノがリズミカルに刻まれて、スッとまとまったバンドアレンジ。どこまでも澄んだ青空みたいなメロディ!真っ先に冒頭のホールアンドオーツが思い浮かんだ。曲の後半ブレークのところでドラムと歌だけになる部分からのギターをジャンって入れるタイミングがツボ過ぎる!
彼らはニューヨーク大学で出会い、一緒に作曲し始めたというメガネっ子Ian AxelとチビイケメンChad Vaccarinoのポップデュオである。僕自身がはじめて聴いたのは恐らく映画「New Years Eve」で使われた「This Is New Year」だと思うのだが、残念ながら認識してなかった。彼らの楽曲だと言うのは後になって知ることになる。後になって考えると、あの映画にはレイチェル・ベリーことリア・ミシェルがボンジョビの代わりにメインを取ってしまういい役で出ていたから何らかの繋がりがあったのだろう。その後Gleeで「This Is New Year」がカバーされ、華々しい舞台へ躍り出て、「Say Something」でアギレラさんとコラボしのぼり調子の彼ら。これらの曲は2010年にひっそりと発表されたIanのソロアルバムに既に収録されている。ちゃんとChadも参加しているので、Daryl Hall & John Oatesで言うところの前身バンドGulliverといった位置付けか!?詳しくは そちらのレビューも見て欲しい。
本作はA Great Big World名義でのデビューアルバムである。本国では既にGleeで取り上げられた2曲目となる「Rockstar」が1曲目。ピアノの柔らかなイントロからIanの特長のあるボーカルが綺麗に乗ってきてあっという間に心を奪われる。アルバムジャケットに描かれている木の上の女の子も歌詞に出てくる。本作は全編を通して二人のボーカルが交互に聴ける。ピアノボーカルのIanはいかにもシンガーソングライターらしい素敵ボイス。一方のChadは少しアイドル的な感じもあるキュンボイス。なんとも贅沢な作りとなっている。個人的にはもちろんIan押しなのだけれど・・・。パワーポップアカデミー的には「Rockstar」や「I Really Want It」がなんたってオススメだけれど、最近良く聴いてしまうのが静かなピアノバラード、「Already Home」である。PVにGleeのブレイン役ダレン・クリスが出演していたので良く聴いていたらハマってしまった。誰にも邪魔されないIanとChadのメロディメーカーとしての真骨頂な作品となっている。
前述の「Private eyes」カバーをライブでやったところ、若者達からはいい曲ですねと言ってもらい(つまり原曲を知らなかった)、メチャ年上の方々にはカバーのセンスが良いと褒められた。やっぱりいい曲は年代を問わず伝わるんだと思った。いくら演奏が下手で酷くても・・・。
見た目は若き日のSimon and Garfunkelみたいな二人(きっとレーベルは意識してると思う・・・、てことはChadは将来・・・?)。世界ツアーと同時並行でブロードウェイの作曲もしていると言う彼ら。これからどうなっていくのか先行きが楽しみである。
<ワタナベオサム>
Ian Axelのソロ作「This is the new year」レビューはコチラ
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