VA "Drink A Toast To Innocence: A Tribute To Lite Rock"
2013 (Monsters of Lite Rock) POWERPOP of the month
超実力派ポップ〜パワーポップのアーティストたちが“Lite Rock”の名曲をカバーした、ボリューム満点のコンピレーションアルバム。“Lite Rock”というカテゴリーをどう捉えるかは、なかなか難しい問題なのですが、本作ではこんな風に定義しているようです。
・1970年代後半から1980年代初頭に流行した軽やかなバラード
・ただし、いわゆるロックバンドのバラード曲は含まない
・代表格はアンブロージアとリトル・リバー・バンド
・マイケル・マクドナルド、ケニー・ロギンスなどのYacht Rockも同じDNAを持つが、Lite Rockは匿名性が高い(つまり、アーティストのネームバリューではなく、純粋に楽曲のよさでヒットした曲ということ)
・80〜90年代の陳腐なバラード歌手の作品とごっちゃにされては困る(←辛辣w)
ということなので、匿名性の高さという点を考慮すると、日本でよく使われるAORというカテゴリーとも、実は似て非なるものなのかもしれませんね。
2012年6月、本作のエグゼクティブ・プロデューサーのAndrew Curry氏が、Lite Rockの名曲を次々と紹介するFacebookページ“Monsters of Lite Rock”を開設。「この曲(アーティスト)はLite Rockか?否か?」について、ホットで楽しい論戦が日々行われていました。ここから、カバーアルバム制作のアイデアが立ち上がり、Andrew氏と共同プロデューサーのElizabeth Raczさんが人的ネットワークをフルに駆使して、さまざまなアーティストと交渉。“どの曲を誰がカバーするか?”をどのように決めたのかAndrew氏にうかがったところ「まず僕が候補曲40曲をリストにした。それを各アーティストに提示して、カバーしたい曲を選んでもらったんだ。リストに載っていない曲を提案してきたのはPaul MyersとSeth SwirskyとCliff HillisとVegas With Randolph。いずれも、このカバー集のコンセプトにぴったりな曲だったので、それを演ってもらったよ」とのことです。
完成して送られてきた音源は素晴らしいものばかり。当初予定していた1枚モノでは絶対に収まらないので、資金調達サイトKickstarterでキャンペーンを実施。見事に目標額に達し、2枚組でのリリースとなりました。
なんかレビューというより、ライナーノートみたいになってますね(笑)。肝心の内容ですが、曲自体の魅力で当時のヒットチャートを駆け上がった選りすぐりの名曲たちを、音楽の技術もセンスも抜群な面々が料理しているのですから、美味しくないはずがありません。収録曲のうち8割方はオリジナルにかなり忠実(楽器を一部替えていたり、ギターが原曲よりゴリゴリしていたり、さまざまな工夫がこれまた楽しい。ほぼ完コピってのもあり)。繊細で儚げなバラードをドライブ感のあるパワーポップにアレンジした「Just When I Needed You Most(The Davenports)」、ストリングスを交えたゴージャスで都会的なサウンドを温かなアコースティックナンバーに仕上げた「I'd Really Love To See You Tonight(Kelly Jones)」などひねりを効かせたカバーも、原曲に対する敬意と愛情が感じられる秀作ばかりです。
1972〜1986年にオンエアされていた「全米トップ40」を聴いていたような大人のみなさんなら、「うわ、懐かしい!! この曲好きだったよ〜」の連続。「そんな時代に洋楽聴いてないし……」「まだ、生まれる前だもん」なんて方なら、「なに、これ?! いい曲じゃん!!」の連発、間違いなし。そうなんです。あの頃のラジオからは、こういうキラキラした音楽がたくさん流れてきていたのです。日本でも、アメリカでも。
たとえば部屋の片付けをしながら、愛車でドライブしながら、街の喧噪の中を歩きながら、自室でゆったりとグラスを傾けながら……。どんなシチェーションでも、このアルバムをかけた瞬間、あなたを包む世界がほんの少し色鮮やかになるのを感じられるはず。そんな魔法が詰まっています。
<トラックリスト>
(演奏者 - 曲名/オリジナルの演奏者(リリース年)/全米チャート最高位/邦題)
[DISC 1]
1.Michael Carpenter - We Don't Talk Anymore
クリフ・リチャード(1979年) 7位「恋はこれっきり」
2.The Davenports - Just When I Needed You Most
ランディ・ヴァンウォーマー(1979年) 4位「アメリカンモーニング」
3.Kyle Vincent - How Much I Feel
アンブロージア(1978年) 3位「お前に夢中」
4.Lisa Mychols - Don't Give Up On Us
デヴィッド・ソウル(1977年) 1位「やすらぎの季節」
5.Throwback Suburbia - I Love You
クライマックス・ブルース・バンド (1981年) 12位
6.David Myhr - The Things We Do For Love
10cc(1976年) 5位「愛ゆえに」
7.Mike Ruekberg - Believe It Or Not
ジョーイ・スキャベリー(1981年) 2位 「アメリカンヒーローのテーマ」
8.Kelly Jones - I'd Really Love To See You Tonight
イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリー(1976年) 2位「秋風の恋」
9.Paul Bertolino - Just Remember I Love You
ファイアフォール(1977年) 11位
10.Eytan Mirsky - Escape (The Piña Colada Song)
ルパート・ホルムズ(1979年) 1位
11.Plasticsoul - Sentimental Lady
ボブ・ウェルチ(1977年) 8位「悲しい女」
12.Popdudes - Magnet And Steel
ウォルター・イーガン(1978年) 8位「磁石と鋼」
13.Joe Giddings - Undercover Angel
アラン・オデイ(1977年) 1位
14.Mike Viola - Steal Away
ロビー・デュプリー(1980年) 6位「ふたりだけの夜」
[DISC 2]
1.Bleu - Baby Come Back
プレーヤー(1977年) 1位
2.Brandon Schott - Thank You For Being A Friend
アンドリュー・ゴールド(1978年) 25位「気の合う二人」
3.The Sonic Executive Sessions - On And On
スティーヴン・ビショップ(1977年) 11位
4.Linus Of Hollywood - More Than I Can Say
レオ・セイヤー(1980年) 2位「星影のバラード」
5.Greg Pope - Crazy Love
ポコ(1979年) 17位
6.Lannie Flowers - Dance With Me
オーリアンズ(1975年) 6位
7.Wyatt Funderburk - Bluer Than Blue
マイケル・ジョンソン(1978年) 12位「哀しみの序章」
8.Vegas With Randolph - Cool Change
リトル・リバー・バンド(1979年) 10位「クールな変革」
9.Seth Swirsky - Shannon
ヘンリー・グロス(1976年) 6位
10.Cliff Hillis - Shake It
イアン・マシューズ(1979年) 13位
11.Paul Myers - Wildfire
マイケル・マーティン・マーフィー(1975年) 3位
12.Sunshine On Mars - Fooled Around And Fell In Love
エルヴィン・ビショップ(1975年) 3位「愛に狂って」
13.Willie Wisely - So Into You
アトランタ・リズム・セクション(1977年) 7位