Mayday Parade "Monsters in the closet"
2013 (FEARLESS)
アメリカの知名度が日本のそれとは比べ物にならない、そんなケースは数多くあるがMayday Paradeもそんなバンドの一つだ。なんと彼らのオフィシャルFacebookページのLike数は150万に迫る勢いで増えており、先日リリースされた4thフルアルバム『Monsters in the closet』は、発売初週に30,000万枚を売りビルボード・トップ10入りを果たしている。
シリアスなエモロックを通過しパンク・メロコアとの融合を果たした所謂、エモ・メロディックバンドを数多く輩出したDrive Thru Records。現在米国でパワーポップと呼ばれるバンドは一世を風靡ししたDrive Thruからの影響が色濃く、中でもこのMayday Paradeは初期The Starting Lineが持つキャッチーさをうまく取り入れ、（リリースの度に変わっていった）本家とは逆に安定したレベルの曲を作り続けてきた。本作も大きな音の変化があるわけでも、突飛なコラボレーションがあるわけでもなく、しっかりとラジオ・フレンドリーな12曲を揃えてきた。
最近、界隈で流行っているQUEEN風の分厚いコーラスを取り入れた1曲目「Ghosts」そして前述のエモ・メロマナーにのっとったキラーチューン「Girls」とのっけから平均点は高い。ラララとシンガロング必須な「The Torment of existence weighed against the horror of nonbeing」ハートウォーミングなタイトルと歌詞、そしてピアノの旋律にグッと来るバラード「Even robots need blanket」は誰の心にも響く愛の歌だ。
ただ全曲聴いたが、良いバンドなのは間違いないものの米国でなぜそれほどまでに支持を受けているのかはわからなかった。加えて日本での人気が低い意味もわからなくはない。例えば、同期の人気バンドたちに比べると、フロントマンのDerek Sandersがちょっと人相が悪いというか悪人面で、NickelbackやStone Sourなどメタルバンドに居そうなところとか。間違いなくイケメンではあるのだが。
では、このバンドの人気の秘訣は何なんだろう。
それはMayday Paradeを嫌いになることが逆に難しいからなのでは？ということかもしれない。各誌レビューではクセのない楽曲、ボーカル、過去曲の焼き増しなどと揶揄され「このアルバムである理由が無い」「デビュー作から何も変わらない」などと厳しい言葉も並んでいる。ただ、それこそが彼らのファンを増やす理由なのだろう。おそらく彼らはナンバーワンにもオンリーワンにもなれない、だがMayday Paradeは「ファンが好きなMayday Parade」であり続ける。シンプルでキャッチーで、切なく、かつ適度にエッジの効いたポップロック。それでここまでやってきたのだ。
それに同期のバンドが次々に音を変え、またその活動を止めていく中で、Mayday Paradeは一年を通して行う膨大なライブ、定期的なアルバム制作、広報活動を止めたことがない。たとえ彼らのことを気にしていなかったとしても、音楽が好きならどこかで曲を聞くことになる。さらには、どこかでライブを見た時にはファンになってしまうのかも知れない。きっかけは努力をしているものに訪れる。この知名度はMayday Paradeが精力的にアメリカ中を走って稼いだものなのだ。
私は他の雑誌と同じことを書こうと決めていた矢先あるライブのSEで「Sorry, not sorry」に出会った。どうやら、このバンドのことがすっかり好きになってしまったようだ。
トラックリスト
1. Ghosts
2. Girls
3. Last Night For A Table For Two
4. 12 Through 15
5. The Torment Of Existence Weighed Against The Horror Of Nonbeing
6. Even Robots Need Blankets
7. Repent And Repeat
8. Demons
9. Sorry, Not Sorry
10. Nothing You Can Live Without, Nothing You Can Do About
11. Hold Onto Me
12. Angels
Fearless Records (2013-10-08)
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