King Tuff "Was Dead"
2013 (BURGER)
2008年に発売されレア盤化していた Kyle ThomasことKing Tuffのデビュー・アルバム『(King Tuff)Was Dead』。このほど元々のリリース・レーベルであるBurger Recordsよりデラックス仕様で再発された。これは60年代に作られたものではなく、T.Rexの幻のアルバムでもない。かといってMikal CroninやTy Segall周辺のニュー・プロジェクトでもない。さかのぼること5年前、King TuffがまだSub Popとサインする前にひっそりと作られた彼のオフィシャル・デビューアルバムなのだ。
彼は10歳からソングライティングを始め、フォーク・インディーバンド、Feathersの活動、そしてJ.MascisとのストーナーバンドWitchと平行してこのアルバムの下地になるものを作ってきた(CD-Rで何枚ものデモ・アルバムを制作しているという)。作られた時代が古いのか、はたまた新しいものなのか。そもそもパッと聞いた人にはわからないかもしれない。だがこのネット時代で、彼のマークボランが酔っぱらったような歌声と、懐古主義のマリファナGEEK野郎「King Tuff」というペルソナは確実に頭一つ抜け出し僕らの目と耳を支配していた。どこまで計算づくかもわからないのに、このオタクが60'sから現代にいたるまで生み出されたパワーポップ、ギターポップの名曲構造を完璧に理解しているかのように感じる。全曲に溢れるメロディーの洪水に、よだれが止まらない状態だ。
おっと・・いけない・完全に写真のぐるぐるサングラスに呪いをかけられてしまっている。パワーポップ界の新星は「笑うせえるすまん」の喪黒福造ばりの暗示力だな、まったく。
「それにしてもDancing on You」「Sun Medallion」という本作の代表曲を超え、ご存知「Bad Thing」のようなどストレートでフレンドリーな名曲を軽々と作ってしまう彼。こんな引き出しを持っていることが末恐ろしい。
余談だが、King Tuffの評価を見るにつけ、日本の奇才、引きこもりの同種、APARTMENTの評価も高まることを願う。
<トラックリスト>
1. Dancing on You
2. Connection
3. Sun Medallion
4. Lazerbeam
5. Lady
6. A Pretty Dress
7. Ruthie
8. Just Strut
9. Kind of Guy
10. Freak When I'm Dead
11. Animal
12. Stone Fox
13. So Desperate