A Fragile Tomorrow "Be Nice Be Careful"
2012(SELF) ¥1,260(taxin)
軽快なビート、キャッチーだが少し物憂げなメロディ。Teenage FanclubやSloan、The Poseisからの影響を公言する通りのサウンドを鳴らす、A Fragile Tomorrow。彼らの新作「Be Nice Be Careful」はまさにディス・イズ・パワーポップ。派手さこそないが、哀愁漂うキャッチーなメロディが、ヴォーカルSean Kellyの少し細くてハスキーな、これまたパワーポップを歌うために生まれてきたような声によって、力強く、切なく響く。
米サウスカロライナ出身の彼らは、一卵性双生児であるSean Kelly(Gt/Vo)とDominic Kelly(Dr/Vo)が中心となり、彼らの弟である Brendan(Gt/Vo)にShaun(Ba/Vo)が加わって結成され、着々と地元でのファンベースを築き上げてきたベテランバンドだ。2008年には、アカデミー賞受賞経歴を持ち、The Neville Brothers・Iggy Pop等のプロデュースも手掛けたMalcolm Burnをプロデューサーに迎え2ndアルバム「Beautiful Noise」を発表し、バンドのサウンドを確立。その後ツアーやアルバム制作を重ね、本作のリリースとなる。
本作ではなんとR.E.M.やPavementなどのビッグネームのプロデュースで知られる大御所Mitch Easterをプロデューサーに迎えたことで、より純度の高いパワーポップ・サウンドが生み出されている。
M-1「Don't Need Saving」ではキュートなキーボードサウンド聴かせ、アルバムの出だしから、彼らが王道パワーポップ・バンドであることを高々と宣言している。続くM-4「Blank Paper」ではThe Beatlesなど古き良きブリティッシュ・ポップからの影響も垣間見え、M-6「Intentions」ではカントリー的アプローチをとりいれた軽快なサウンドとハーモニーを披露。そしてMVも制作されたM-8「Kernersville」ではThe Poseisを思わせる、力強さと心細さを併せ持ったような、メランコリックなサビのメロディ。どの楽曲からも彼らのポップソング偏差値の高さが伺える。
このように書くと、ありがちな「往年のポップソング好きおじさんバンド」と思われるかもしれない。確かに彼らのサウンドを語るときにどうしても「古き良き」とか「王道」といった枕詞を使いたくなってしまうが、そこにしっかりと90年代パワーポップへの敬意を持ちつつ、メロディの細やかな機微やアレンジの巧みさが凝縮されている。いわゆる「普遍的に良い曲(メロディ)」であることに愛を注ぎ、決して突飛なことはしていないため「新しさ」こそ目に付きづらい。しかし楽曲たちが持つ純然たる輝きは確かに息づいていて、その輝きは、聴けば聴くほど好きになってしまう魔法となってあなたの耳へと届けられるだろう。
<トラックリスト>
01. Don't Need Saving
02. Crooked Smiles And Greedy Hands
03. Loyalty Lies
04. Blank Paper
05. Longtime To Be Happy
06. Intentions
07. All My Friends Are Gone
08. Kernersville
09. Mess You Made
10. Count On Both Hands
11. My Home
12. Three More Hours
13. Dropoutreunion
14. Daylight