Fun. "Some Nights"
2012(WARNER MUSIC JAPAN)
人気テレビ番組「glee(グリー)」の劇中でカバーされたシングル「We Are Young」の累計ダウンロード数は、この原稿を書いている時点で既に500万越え。今年2012年7月に行われた初公演来日は瞬殺ソールド・アウト。さらに欧州最大級の音楽アワード「2012 MTV EMA(ヨーロッパ・ミュージック・アワード)」には最優秀新人賞を始め計3部門にノミネートなど、彼らの快進撃は衰える事を知らない。
クラシカルなサウンドの中に巧妙に織り込まれた(そして一聴しただけでは気付きにくい)時代の先端を行くアレンジ力は前作『Aim & Ignite』で証明済みだが、今作ではさらにアフリカの広大な大地を想起させるトライバルなフレイバーと、よりクラシカルで伝統的なアレンジが施されたオーケストラサウンドが盛り込まれ、そのスペクタクルで濃厚な世界観はより強化されている。
このローファイでシンプルなインディポップ/ロックサウンド全盛の時代において、ともすると過剰と言われかねない、飾り立てられ誇張されたサウンドは、瞬く間に世界を席巻してしまったのはなぜか。それは、純粋に彼らのメロディとハーモニーの良さが人々の心に届いているからなのだと思う。デビュー当初から、初々しさや稚拙さを全く感じさせない完璧な世界観が注目されがちだが、きっと彼らは“ポップであること”の正統性や説得力を完全に把握しているのだと思う。 “メロディ(ハーモニー)の力”を心底信じているのだと思う。そしてそのパワーを徹底的なプロダクション能力でまとめ上げ、このアルバムは一大抒情詩にまで昇華されたのだ。
オペラの幕開けのようなイントロから始まり、クイーンばりのハーモニー・ワークで始まるアルバムタイトル曲「Some Nights」、R&Bシンガーのジャネル・モネイをフィーチャリングした大ヒットシングル「We Are Young」と続くアルバム冒頭部分。そこだけでも既に多種多様なタイプの楽曲が詰め込まれているし、その一曲の中にもさらにいくつものアレンジパートが飛び交っている。明らかに過剰なはずなのに、アルバムを通して聴くと、まるでコンセプトアルバムのようにすっきりと一貫した印象が残るのは、やはり彼らのアレンジ力、ディレクション能力の高さゆえのクオリティであろう。
これはまさに古き良きポップ~パワーポップ・ミュージックの最新アップデート版。往年のクイーンファン、ビートルズファンにも是非聴いてほしい一枚だ。
トラックリスト
01. Some Nights Intro
02. Some Nights
03. We Are Young (feat. Janelle Monae)
04. Carry On
05. It Gets Better
06. Why Am I The One
07. All Alone
08. All Alright
09. One Foot
10. Stars
11. Out On The Town
12. Carry On [Acoustic] (※bonus track)
13. We Are Young [Alvin Risk Remix] (※bonus track)
14. We Are Young [Betatraxx Remix] (※bonus track)
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